病人が読んだ『ハーモニー』(書籍編)(追記あり)。

映画を見た後で原作を読んだ。毎度のことだがラストが来て欲しくなかった。その「毎度」と言っても、伊藤計劃の単著小説はこれで終わりである。

この『虐殺器官』のエントリ(リンク)にもあるように、もともと伊藤計劃氏を知ったのは雑誌『こころの科学』でかつて連載されていた精神科医・風野春樹氏のコラムだった( 特別企画 「職場のうつ」、2013年5月号)。それもたまたま健診のため病院の待ち時間に読んだ。

ゼロ世代にはいろんな大事なことを逃してしまい、というのは、ひとつ前のエントリで書いた辛いことは長患いだけでなくDV離婚もあったためだ。精神的にはまだ立ち直っておらず(病気の一部となっている)、2004年の離婚当初は連続した記憶を保つのが難しかった。なぜかうちの前ブログはその翌年から始まっているけれど。すこし人心地ついたころ、伊藤氏は亡くなってしまっていた。

本のあらすじなどは前のエントリで語ってしまったので、ハヤカワ文庫JA新版に付いている著者インタビューについて、内容にあまりいろいろ触れずに語ろうと思う。初出はSFマガジン2009年、インタビュアーは佐々木敦氏。収録は2008年。

その前に、小説全編に渡って出てきていたhtmlのようなタグは重要な意味を持つのだが、タグが読めたら少し英和辞書を引いてみるともっと話が分かるのでおすすめ。このタグなんかかっこいいし。
ひとつ疑問だったのは、最後の章で語っていたのは誰なんだろう?


インタビューの内容を少し書く。執筆はずっと病院だったので大変だったと(佐々木氏の解説によると、スタッフは全員防菌マスク着用だったそう)。前作とは違い、最初は全然違う話だったとか。薬の影響が強かったとあるので、副作用だろうか。

(わたしは、今は変えて行くと合う薬(ここでは抗がん剤)が見つかりなんとかやっている、という患者さんの話聞いたことがある)

主人公は最初性別を考えないで書き、ここでは女の子(理屈を喋る)にしたらアドバンテージがありそうだと思ったのでそうした。付いてくる子がいると百合っぽさも出るし。

――で、ここからなるほどというかやっぱりと思ったのが、

僕が考えるロジックというのは、やっぱり自分が生きている状況に関する、ある種の分析になってるんですね。なぜ、自分は今病院にいて、こうした治療を受けているんだろうとか、なぜ今はこうした医療体制なんだろうとか、そういうところから考え始めたある種、切実なロジックです。切実なロジックを、その切実さを残したままキャラクターに喋らせると、なんとかエモーショナルになってもらえるんじゃないだろうか。そういう期待のもとに書いている部分はあります。

ハヤカワ文庫JA新版 p379-380

『虐殺器官』もそうだが、生と死が濃厚にテーマになっている小説で、患者でもある著者はやっぱりこういうことを考えていたんだなと。うっすら透けているようにも思えるが「なんで自分が病気に」もきっとあったのではないか。

冒頭の『虐殺器官』のエントリでわたしは伊藤氏の努力もあった上で「才能には」(2019/08/17追記)あたわったものもあったのでは、と「神」を出してしまった。未熟な書き方だったし唐突だったと思うが、大して信心深くない人間が、それも神よりは科学寄りの人間がそんなことをどうして書いたのかをもう一度書く。病や災難に関しては、本人がどうすることもできずどこかから降ってきた、そして本人の努力だけではいかんともしがたいという感覚が自分には強いからだ。そういう存在を便宜的に「神」と呼んでいるような感じで、人を越えた何かから趣味の悪い罰ゲームを食らわされている気分なのだ。

(2019/08/17追記)病を得なければ作風は違っていただろうから。

わたしはこのインタビュー中にあったように、本作を例えばケータイ小説的に「娯楽」とか「感情を消費する」ような読み方はできなかった。『虐殺器官』もそうは読んでいないと思うが、医療をテーマにされてしまったのでこちらの逼迫感は上がった。この方の「切実さ」はわたしの問題でもあるから、個人で感じ方が違うのを考慮してもある程度伝わったと思う。生きておられる間に存在を知りたかった。最初に書いた風野先生は、病跡学の学会か何かで伊藤計劃を扱ったことがある。

この本を糧のひとつにして、さて人生どうやって乗りきるか、である。

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